微生物イッチーの雑草ブログ

なんの役にも立たないけど刈っても刈っても生えてくる

春の日

あれから何年経ったのだろうか。

7年か8年前だろうか、

しばらく会うことのなかった友が

突然逝ってしまったのは。

 

命日が近づくと何故か彼が夢に現れる。

だから俺は彼の命日を忘れることがない。

何年目かは忘れたけど。

今年は妻を彼に紹介しよう

 

妻をつれて墓地へ行った。

小さな山の上にある古い墓地、

友の墓の前には、思いがけず先客がいた。

 

少し離れた場所で、先客の背中を見ていた。

古ぼけたセーターを着た、猫背で小太りの

さえない中年の男。

手を合わせた後、顔をあげ墓を見つめている。

しばらくそうしていた。

 

男が踵を返したとき目が合った。

「同級生です」俺は挨拶した。

男は「同じ職場だったんです」

と少し微笑んで答えをくれた。

 

男は小さくお辞儀して、

力なく山を下っていく。

その背中を見えなくなるまで見送った。

 

友人の死は、俺やその男の心に

今でも何かを残し続けている

それがなんなのかはわからない。

 

ただ、いまこのとき、ありとあらゆるものが

深い悲しみを湛えている

あの日と同じような

春を感じさせる青い空も。

 

彼が死を選んだその時の夜の闇に

いまこの時がまだ

支配されているような気がしてならない。